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EU、スマホ充電器の規格を統一へ(21/09/26) [ニュース]

 欧州連合(EU)は、スマートフォンなど電子機器の充電ポートをUSB Type-C(USB-C)に統一する方向に動き出した。今月23日に欧州委員会から統一規格を義務づける法律の草案が提出されたが、欧州議会と欧州理事会の合意の下に法案が採択されれば、メーカが対応するための24ヶ月程度の猶予を経て、統一が実現される。
 EUの狙いは、消費者利益と廃棄物削減にあるようだ。欧州委員会によれば、消費者は携帯機器用の充電器を平均3個所有しており、規格が統一されれば、年間2億5000万ユーロに及ぶ不必要な充電器の購入費が節約できるという。また、廃棄される未使用の充電器が年間1万1000トンにもなると推定され、その削減も重要である。これまで10年以上にわたって自主的に共通規格を採用するようメーカに求めてきたが実現されず、USB-Cのほか、iPhone用のLightningなど複数の規格が並存する。
 接続端子の規格統一がどんな影響をもたらすかを考えるための参考として、家庭用電気コンセントを例に挙げよう。日本における一般的な家庭用コンセントはJIS規格で細かく規定されており、どのメーカの電気製品も即座に接続できて便利だが、必ずしも万全とは言えない。何よりも、ロック機構がないため、抜けかかったコンセントが原因となる感電事故や火災が跡を絶たない。プラグの刃には位置と大きさが厳密に定められた穴があり、ここにコンセント内部のボッチがはまって抜けにくくするはずだったが、なぜか穴だけが義務化されポッチの方は任意とされたせいで、ほとんど利用されないのが現状である。また、電化製品が普及し始めた当初はアース側を区別しないと故障につながったため、アース端子であることを示すようにコンセントの左側の穴は右側より2ミリ大きくなっているが、現在では意味がない。
 電気コンセントの例に示されるように、規格の統一は製品の普及にプラスだが、状況の変化に対応できない危険性を伴う。USB-Cは、上下左右の区別がないシンメトリックなデザインで、電圧は5~20Vまで対応。信号ラインを介した充電器と接続機器間の通信によって適切な電圧・電流を設定できるようにするなど、現時点ではよく練られた性能を備える。しかし、今後の変化にどこまで応じられるかは、未知数である。
 スマホの充電に関してユーザの要望が強いのは、充電時間の短縮だろう。現在すでに、メーカ独自の急速充電が行われつつあるが、こうした急速充電では高電圧が必要になることが多い。ユーザの要望を受けてUSB-Cの対応電圧を増すことは可能か、増加させたときに旧式の機器が故障しないか---などの懸念がある。
 ここ四半世紀ほどにおける電気技術革新の要となったのが、蓄電池の改良である。ポケットに入る携帯電話が誕生したのも、次世代自動車の本命が燃料自動車から電気自動車に変わったのも、空中浮遊の技術にさして進歩がないのにドローンが空を飛び交うようになったのも、大容量で小型軽量化された蓄電池が開発されたおかげである。将来、数分で1ヶ月分の充電が可能な携帯機器用蓄電池が発明され、USB-Cでは対応できないとなったときには、どうするのだろうか。

【補記】筆者の世代では、充電器よりもACアダプター規格の乱立が悩みだった。PC本体と周辺機器を動かすのにACアダプターが必要なのだが、電圧と端子の極性・形状がバラバラで、すべての機器用に買い揃えなければならない。結果、樹液に群がるテントウムシのように、ACアダプターが電源タップに密集した。
 USB給電が可能になってからPC周りがずいぶんとすっきりしたものの、本体の背後に手を回して接続するときなど、USB端子がなかなかはまらず苦労した(悪名高いS端子ほどではないが)。はまらないのは上下が逆だからとひっくり返しても、うまくいかない。もう1回ひっくり返すと、なぜか一発ですっと入る。私は、この現象を「USBの謎」と呼んでいた。

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