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アインシュタインの相対論メモ、15億円で落札(21/11/25) [ニュース]

   アインシュタインが書き残した一般相対論に関するメモがクリスティーズのオークションに出品され、1160万ユーロ(約15億円)で落札された。アインシュタインと友人のミケーレ・ベッソの手になるこのメモは、1913~14年にチューリッヒで記されたもので、54ページに及ぶ。内容は、一般相対論を準備する際の理論計算を含むものらしい。
 重力がエネルギーによって生じた時空のゆがみに起因するという一般相対論は、3つのステップを経て完成された。第1のステップは、等速度運動に関する特殊相対論を加速度運動に拡張しようとするもので、1907年頃から構想された。加速度に伴う見かけの力と見なされていた慣性力が重力と等価だと主張する等価原理をもとに、エネルギーによる時間の伸縮が重力を生み出すというアイデアに到達したものの、「各地点における光速が重力を表す」というスカラー重力理論に囚われて行き詰まってしまう。
 行き詰まりを打開するため、アインシュタインは相対性原理の基本に立ち返り、エネルギーが時間だけでなく空間も伸び縮みさせると考え、学生の頃に勉強したガウスの曲面論を利用しようと試みたが、あまりに難しくて手に負えない。そこで、1912年にチューリッヒ工科大学の教授に就任した際、幾何学を担当していた旧友のマルセル・グロスマンに助けを求めたところ、曲面論の発展形であるリーマン幾何学を紹介され、これを理論に取り入れることにした。アインシュタイン=グロスマンの共同研究は、重力場とエネルギーの分布を結びつけるという一般相対論の基本構想として結実する(第2のステップ)。ただし、すべての観測者にとって基礎的な物理法則が同じ形式になるという一般共変性を有する式(後に「アインシュタイン方程式」と呼ばれるもの)は、見いだせなかった。
 アインシュタインは、1913年から15年にかけて集中的に研究を進め、何本もの(多くは不完全な)論文を書きまくった。1915年夏には、ゲッティンゲンで一般相対論の講演を行うが、これを聴講したヒルベルトは、天才数学者らしく難解な内容を直ちにマスターし自分でも研究を始める。この動きにせかされたのか、アインシュタインは、水星の近日点移動に関するこれまでの議論を見直し、おそらくその過程で正しい基礎方程式に到達する。これが、一般相対論の完成となる第3のステップである。
 今回落札されたメモは、グロスマンとの共同研究によって一般相対論の基本構想ができあがりながら、肝心の基礎方程式が見いだせずに焦燥していた頃のもの。このメモを分析すれば、アインシュタインがどんな過ちを犯し、どこに引っかかって基礎方程式に到達できなかったかがわかるかもしれない。


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